Open Heart〜密やかに たおやかに〜
みんな次々に帰り始めている。
今日も私は残業かと、ため息をついていた。
「お疲れ、宮路。俺は少し席を外すから終わったら俺のデスクへ置いて帰ってくれ」
私の椅子の後ろを通りながらシュウちゃんは言ってくる。
私1人が残業?
うわっ、あり得ない。
そうは思っても上司に反論はしにくい。
「ああはい、わかりました」
「じゃあ、よろしく」
シュウちゃんは、私の肩をポンと叩いてから歩いて行った。
シュウちゃんの背中を見送りながら、マキの言っていたことを思い出していた。
『課長が触れるのは樹里だけだと思う』
シュウちゃんが触れた肩に手を置いてみる。
悪い気はしない。
やたらと女子社員に触れるような上司は、好ましくない。
前からシュウちゃんに女たらしの要素は無いと思っていたけど、初めから彼女である私にしか触らないと決めているのだろうか?
それとも自然と私にしか触らない人なのか。
とちらにしても嬉しい気分だ。
シュウちゃんに特別扱いされているなんて、すごく気分が良い。
パソコンの画面に向かい企画書を書き直しながら、私は自然に楽しい気持ちになりキーボード
をひたすら叩いていた。