Open Heart〜密やかに たおやかに〜
同じエレベーターに2人で乗る。
後ろの壁面近くに立った私の隣にシュウちゃんが来た。
表示される数字を見上げながら、シュウちゃんと私は、どちらからともなく近づけた手を重ねる。重ねた手をシュウちゃんの背中に隠しお互いの指を絡めた。
エレベーターが止まるまでシュウちゃんと2人きりでいられそうだ。
「シュウちゃん」
「ん?」
シュウちゃんの方へ向き少し背伸びをする。そして、シュウちゃんの耳元で私は囁いた。
今、伝えておきたくて堪らないシュウちゃんへの気持ち。
「シュウちゃん、好き」
シュウちゃんの耳が見ているうちにどんどん赤くなる。
「やばいよ、シュウちゃん耳が赤っ」
「やばくしたのは、樹…」
ポーンと音がして、別の部署の人が3人乗り込んできた。
「お疲れさまです」挨拶しながら、私とシュウちゃんは何にも無かったみたいに壁面に並ぶ。
人に見られるんじゃないかとヒヤヒヤしてしまい、逃げ出しそうになった私の手をシュウちゃんの手がずっと捕まえていた。
私はシュウちゃんが好きだ。すごく好きでこうして一緒にいるのに、もっともっと一緒にいたいと思ってしまう。
シュウちゃんと2人でいれたら私は幸せだと感じることが出来る。きっと、シュウちゃんもそうだろうと信じている。
シュウちゃんを私は丸ごと好きだ。
1番に好きなのは、シュウちゃんの笑った時に出来る頰の皺だ。
可愛らしいシュウちゃんは、必ず幸せになるべき人だ。出来ることなら私は、シュウちゃんに幸せを与えられる存在になりたい。
だって、私は既にシュウちゃんには沢山の幸せをもらっているのだから。
結婚したら、シュウちゃんをずっとずっと幸せにしたい。シュウちゃんが幸せなら、私は幸せなのだから。
シュウちゃんの手をぎゅっと掴んで、私は階数を表示する数字を見上げた。
シュウちゃん、おねがいよ。
私の手をずっとずっと離さないでいてね。
心の底から、そう願っていた。