Open Heart〜密やかに たおやかに〜

1階下のフロアにある営業部へ行くために、階段を使った。

営業部へ行くと、何人かの社員がいて、1番奥の窓際のデスクに山田課長の姿を見つけた。

「失礼致します」

電話中の山田課長は、私を見ると手を上げてみせた。

待ってればいいのだろうか。

山田課長の電話が終わるのを待ちながら、山田課長を観察していた。

社長の言っていた人物が山田課長だとすると、社長のプライベートな話にまで首を突っ込み、従う理由はなんだろう?

出世が目的なんだろうか? それとも、私と同じようにお金か?

メガネの奥に見える山田課長の切れ長の目が、課長を観察していた私を捉えた。

冷たい感じのする涼しげな目元は、今日も健在で、綺麗なんだけど、どこか怖い。


受話器を置いて、椅子から立ち上がり私の方へ歩いてきた山田課長。

ピリピリと緊張している私の前に山田課長はヌッと立ち私を見おろした。
「宮路さん悪かったね。 手伝いなんか頼んで」
相変わらず、抑揚のない冷たい話し方が、どこか怖い人だ。

「い、いえ、とんでもないです」

「さて、行きますか。品川店にサンプルがいってるから車で向かい、あちらで包装します」

「車ですか……あの山田課長が運転を?」

「ええ」

前に歩く山田課長の背中を見ながら、既に緊張していた。

いよいよ、2人きりの車内で山田課長は、これから私がとるべき行動を話してくるはずだ。

そう考えると、すごく体が固くなってくる。黙って山田課長の後ろをぎこちなく歩いた。


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