Open Heart〜密やかに たおやかに〜
「まず、コレはビジネスだ。この案件が上手くいかないと、俺は出世出来ないし、金も返す羽目になる。あんたも俺も無事に終了するまでは、秘密厳守だ」
「わかってます」
「話を進める前にひとつ聞きたい」
ヌッと近づいてきた山田課長の顔。
「……」
なるべく離れようとして助手席の窓に肩を付け、山田課長を見た。
「あんた、本当に王子と別れる気があるのか?」メガネの奥にある目が鋭く光って見える。
「そ、それは……」
すぐに返答出来ずにいた私の喉を、山田課長が
すばやく腕で、ぐっと押してきた。首が椅子のヘッド部分に食い込むようにジリジリと押される。
「くるし……」
押してくる山田課長の腕を必死で掴む。
「半端な気持ちなら今すぐにヤメろ。俺は、あんたと心中する気は毛頭無い」
更に腕で喉を押してくる山田課長。
「はなし…て」
山田課長の腕を両手の爪を食い込ませるほど掴んでもがいた。
「いいか。手始めに社長とは関東支部の部長職に就かせてもらう約束になっている。あんたに俺の邪魔は、させない」
「くるしっ」
かなり息がくるしくなってきて足をバタバタさせる。シートベルトを締めたせいで体が思うように動かない。
「コレはビジネスだ。あんただって金を貰ったんだろ? 貰った時点でビジネスは成立している。そして、このビジネスは成功なければ俺たちは終わりだ」
気を失いかけた私から、ようやく腕を遠ざけた山田課長。
「ゴボッ、ゴホッ、ひどい……こんなこと」
苦しいくらいに首を押さえつけられ、咳が出たし涙が溢れた。