Open Heart〜密やかに たおやかに〜
会社を出てから、最寄り駅の方向ではない方へ向かって少し歩く。
大通り沿いの道から右へ曲がり、少し人通りが少なくなった場所にあるカフェ。
どこにでもある大手チェーン店のカフェだ。
自動ドアから中へ入ってカウンターへ向かう。
メニュー表を見て、指を差して注文する。
「ん〜と、ゴールデンメイプルラテください。ショートで」
季節のおすすめ商品には、目がない。季節ごとに違うものを味わいたい。たまにハズレることもあるが、そんなことは問題ない。それより、何事にも冒険心は必要なのだ。
適当に空いてる席を探して座る。店内の客の入り具合は、7割程だ。
2人掛けのテーブル席に座り、バッグからスマホを取り出した。
ひび割れた画面を見ると、ため息が出てしまう。
なんて、かっこ悪い。もっとスマホって丈夫かと思ってた。っていうか、ケースにも入れてるのに落とした位で簡単にひび入るもんなのかなぁ。
ん? ラインが来てる。
【今から出る。待ってて】
思わずニンマリし少し考える。
考えた上であえて返事をしないでスマホをバッグへしまった。
これで、シュウちゃん、少しは私を心配してるかなぁ。
甘いメイプルの香りがするラテのホイップクリームをスプーンですくう。
ゆっくり口へ入れて「う〜ん、美味しい」と1人で頷いていた。