Open Heart〜密やかに たおやかに〜
まだ、付き合いだす前に黄色く色づいた銀杏並木が綺麗な公園へ行った。確かシュウちゃんと3回目に会った日だ。
ポカポカとした陽気が気持ち良くて、うとうとと眠りそうになっていた。飲み物を買いに行くと言ったシュウちゃんをベンチに座り待っていた。
少しの時間なのに、私は眠気に勝てず、ついつい居眠りしていたようだ。
目を開けた時に、私は何かに寄りかかっていた。
わっ、これってもしかして!
誰かの肩にもたれかかって居眠りしていると気がついたが、私はすぐに動かなかった。肩の主がシュウちゃんだとわかったからだ。
もう少し、このままでいたい。
ダメかな?
そう思いながら、目を閉じ寝ている振りをして肩にもたれていた。
すると、彼がブツブツ独り言を言い始めた。
「……です。いや……好きになりました。なったと言うのは、変か。付き合ってくださいだけじゃおかしいよな……」
告白の練習みたいだった。
もしかして、私に告白してくれるの?
目を瞑りながら、ドキドキして聞き耳をたてていた。
「普通すぎるのは…どうもカッコ悪いよな。もしかして彼氏がいるかもしれないな。そうだ。俺、確認してないじゃん……全く……」
ため息と共に、無言になったシュウちゃん。
いやいや、彼氏なんていないから。
いたら、こんな休みの日に他の男と会ったりしないから。
居眠りをしているという設定だから、返事も出来なかった。
でも、これ以上黙って聞いてもいられないと思い、バチっと目を開けた私。
「ひゃっ!」
思わず、声をあげてしまった。目の前に彼の顔がドアップで見えたからだ。
「いや、あのコレは!!」
焦りまくるシュウちゃん。
「えっ、何? 今、キスしようとしてましたよね」
「い、いや、あの……すいません。つい、寝顔が可愛くて、その」
「私にキスしようとしたんですか? 」
「そう、露骨に言われたら……すいません」
真っ赤な顔で、肩をすぼめ小さくなってしまうシュウちゃん。
「いえ、事実を知りたいんです。謝るってことは、やっぱりキスしかけたんですね?」
「はぁ、すいません……」
「謝らないでください。謝るのは、私の方です」
「え?」
「だって、私が目を覚ましたせいでキスし損ねたんでしょう」
「そうですが、やはり俺が寝ている貴方に……しかけたのは問題です」
「いいえ、問題になるなら私の方が悪いです」
「え?」
シュウちゃんは、すごく驚いた表情を浮かべていた。
「居眠りした振りをしてました。途中から起きてましたから」
「と、途中ですか?」
「告白の練習みたいな言葉をブツブツ言ってる時からです」
「え……」
燃えてるみたいに真っ赤になっていくシュウちゃん。
「ごめんなさい。それから私、彼氏とかいませんから」
「それじゃあ…」
「はい、大丈夫です!」
元気よく答えてあげた。ワクワクしていたのを思い出す。
「本当ですか?」
ぱあっと明るい笑顔を見せ身を乗り出してくるシュウちゃん。
「えぇ、本当に」
「では、改めて……」
そういうと、私の肩に手を回し、私の顔に顔を近づけてくるシュウちゃん。
「え、え?! ストップ」
私は急いで近づいてきたシュウちゃんの口を手で塞いだ。