Open Heart〜密やかに たおやかに〜
14、星を数えて
街の夜景を一望できるオシャレなダイニングバー。宮本くんが選んでくれたお店だ。
宮本くん、こんな素敵な場所知ってるんだぁ。かなり意外だった。でも、宮本くんも伊達に社長してる訳じゃないのかもしれない。
接待とかで、色んな店を知っているのかもしれなかった。
だが、ガサツっぽいイメージの宮本くんとは対極にあるお店過ぎて、正直言って面食らっていた。
マゼラン星雲が描かれた壁面を通り抜け、窓際の景色が良く見えるスペースに案内される。
4人で座るには、十分なスペースのあるテーブル席だ。
手前の窓際席にマキが入り、その隣を宮本くんがキープしてしまう。そうなると、必然的に私がマキの前に座り、シュウちゃんが私の隣に座ることになった。
ドリンクメニューを先に見せてくれるシュウちゃん。
「ありがとうございます」
前なら寄り添って外を見ながら座ったと思える長椅子。今は、私とシュウちゃんの間に人1人分くらいのスペースがあいている。
目の前に座るマキと宮本くんは、メニューを眺めて「これも美味しそ」とか「魚大好き」とか仲良く話してページをめくっている。
オーダーを済ませると、宮本くんが話し始めた。
「しっかし、マキさんは美人ですよねー。岡田課長は幸せですね。美人揃いの会社で」
「美人揃いって、その中に私も入ってるの?」
冗談めかして、宮本くんに聞いてみた。
「ん? 宮路はどうかなぁ」
相変わらず宮本くんは、正直すぎる。
「ひどいなぁ〜宮本くん」
「ジョークだよ。区分けする場合は、仕方ないから、おまえも美人の区に無理言っていれてやるって。ね、岡田課長」
微妙な話を振られたシュウちゃん。
「うちの会社は、この2人も含めて美人揃いですよ」
「岡田課長ってば、さすが部下思いな答え方!」
マキが感心したように頷く。
「いやぁ、でもマキさんみたいな女性が彼女だったら、俺、絶対に鼻が高いと思うなぁ」
「え、どうして?」
「だって、すごい美人さんだもん。最初会議室でマキさんを見た時、俺、スッゴイビックリしちゃったんだから」
「そうなの?」
「マジで、こう、心がね、ガクブルッて震えたんだから」
胸に手を当てる宮本くん。
「やだ、思ったよりキザね、宮本さんって」
「いや、本気本気! 羨ましいなぁ、マキさんの彼氏」
「いないですよ、彼氏なんか」
「ホントに? じゃ、俺!宮本二郎、マキさんの彼氏に立候補しまーす!」
オシャレなお店に合わないようなノリの会話が続いていた。
ドリンクが運ばれてきて、4人で乾杯をした。
「いやぁ、俺は感謝してるんすよねー、岡田課長に」
グラスビールをグビグビ飲んだ宮本くんが、うって変わって真剣な顔をシュウちゃんに向けた。
「俺に?」
社長の息子であっても庶民派のシュウちゃんは、宮本くんと同じようにグラスビールを飲んでいた。