闇喰いに魔法のキス
すると、青年は割れたグラスへちらりと視線をやって、そして私へと話しかけた。
「とにかく、用のない奴はさっさと家に帰れ。ここは子どもがいていい場所じゃない」
その言葉に、私は、はっ!として答える。
「用ならあります!私は、黒き狼という情報屋さんを訪ねて来て……」
その時、酒場のカウンターの奥から足音が聞こえてきた。
ふと言葉を中断して足音の方へと視線を向けると、酒場の奥の扉が開いて、ひょいと一人の青年が顔を出した。
「レイ。すごい音がしたが、何かあったのか………」
そう言いかけた青年は、カウンターの前に立つ私に気づいて話を止める。
漆黒の髪に藍色の瞳。
コートを身にまとったそのスラリとした姿は目が離せないほどかっこいい。
すると、漆黒の髪の青年は私を見るなり、ふっと小さく口角を上げて目を細めた。
「……へぇ、珍しいお客が来たもんだ。偶然迷い込んだ…ってわけではなさそうだな?」
青年は少しの間私を見つめると、カウンターから出て、酒場のソファに腰を下ろした。
そして、テーブルの上に置いてあった黒いノートパソコンを開くと、慣れた手つきでカタカタと操作し始める。
その時、カウンターに立つ銀髪の青年が、私に向かって口を開いた。
「おい。お前、さっき何を言いかけた?」
「え…?」
その時、ここにきた理由を言いかけて中断していたことを思い出す。
私は、銀髪の青年を見つめながら答えた。
「私は、黒き狼と呼ばれる情報屋さんがここの酒場によく来ていると聞いて、会いに来たんです…!」