闇喰いに魔法のキス


すると、今まで黙ってパソコンを操作していた漆黒の髪の青年がピタリと手を止めた。

そして、ふっと私へと視線を向ける。


私が不思議に思って彼を見つめ返すと

漆黒の髪の青年は、私の顔を覗き込むように顔を少し傾けて口を開いた。


「平和な世界で生きてきた嬢ちゃんが、裏の情報屋に一体何の用があるんだ?」


その言葉に、はっ!として尋ねる。


「まさか、あなたが黒き狼……?」


すると青年は少しの沈黙の後、不敵に微笑んで答えた。


「そうだって言ったら、嬢ちゃんはどうする…?」


私は、目を見開いてソファに座る青年を見る。


漆黒の髪の毛に、黒いパソコン。

そして細身の黒いコート。


考えてみれば、この人が黒き狼と呼ばれていても違和感はない。


私は漆黒の髪の青年に近づいて、じっと彼の瞳を見つめながら言った。


「調べて欲しいことがあるんです。闇の組織のことと……“シン”という闇魔法のことを」


ほぉ…、と、ソファに座る青年は興味を持ったように瞳の色を変えた。

そして、私は言葉を続ける。


「それと、ギルという闇喰いについてなんですが…」


その時。

カウンターからガタッ!!と大きな物音がした。


驚いてカウンターへと視線を向けると、銀髪の青年が動揺した表情を浮かべ私を見ている。


きょとんとしていると、漆黒の髪の青年が胸元からタバコの箱を取り出して、その中の一本に火をつけた。

そして長い指でタバコを持ち、口へと運びながら、低い艶のある声で私に言った。


「俺は情報屋だが、“ノラ”じゃないんだ。主人がちゃんといるんでね。嬢ちゃんには悪いが……誰にでもペラペラ話せるような安い情報は扱っちゃいないんだよ」

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