闇喰いに魔法のキス
*涙を拭かせて
────!
目の前も、頭の中も、心も。
全てが色を無くし、崩れていく。
そこにただ一つだけあるのは、かつてのお父さんの影。
光であるはずの姿が、真っ黒な闇で覆われていく。
誰よりも闇魔法を憎んでいたはずのお父さんは、私に真実を隠し続けていた…?
お父さんが……“闇喰い”だった…?
お父さんは、魔法の研究で過労死したんじゃない。
禁忌を使い、命を削り、ギルのリバウンドを請け負って死んだ……?
何も、言葉が見つからなかった。
言うべきことは、たくさんあったはずなのに。
叫びたいほど、伝えたいことがあるはずなのに。
その時
廃墟に、凄まじい魔力が放たれた。
ふいに現実に引き戻されたように目の前を見ると
ギルの瞳が燃えるように輝き、エンプティを鋭く睨みつけていた。
パァン!!
黒いイバラが吹き飛び、さらにギルの魔力が解き放たれる。
それをちらり、と見たエンプティは
微かに口角を上げて、私たちに背を向けた。
『…今度は、ルミナの目の前で、“二代目”の正体を暴いてあげるよ。』
「…エン…プティ……!!」
ギルが心の底から湧き上がる激情を込めた声でそう呟いた瞬間
エンプティは、ばさりと外套を翻し、煙のように姿を消した。
ビュオォォオッ!!
激しい風が辺りを吹き抜ける。
ふっ、と目を開けた時には、エンプティの魔力も完全に無くなっていた。
しぃん、とその場が静まり返る。
誰一人、声を出せる者はいなかった。
……ザッ。
少しの間の後、足音がだんだん私に近づいてきた。
ぴたり、とその音が止み、私が、ふっ、と顔を上げると
そこには、弱々しい光を瞳に灯らせたギルがいた。
「………ルミナ…。」
彼が、小さく私の名を呼んだ。
その声は、感覚の無くなっていた私の耳に、はっきりと届いた。