闇喰いに魔法のキス
「…顔色悪いぞ。大丈夫か?」
レイが、私の顔を覗き込んだ。
整った顔と綺麗な碧眼が目の前に来る。
…冷たい手の温度。
初めてギルと会った時、頬に感じた温度と同じ。
その仕草全てが、記憶の中のギルと重なって見える。
「っ…だ、大丈夫!
私は何ともない…!」
ぱっ、とレイから離れると
レイは不思議そうな顔をして私を見つめた。
私が軽く俯くと、ロディが眉間にシワを寄せながらレイに言った。
「…お前、何ナチュラルに嬢ちゃんに触ってんだ。」
「えっ?!
ね、熱がねぇか確かめただけだろ。今のはセーフだ、セーフ。」
いつもなら意識してしまうような二人の自然な会話も、今の私にはギルの影が重なって見える。
…ロディは、全てを知っているんだよね。
その時
ロディが、ふと思いついたようにレイに声をかけた。
「そうだ、レイ。
この小瓶開けてくれよ。」
「あ?小瓶?」
!
私は、ロディの言葉に、ばっ!と顔を上げる。
ロディは、小瓶を差し出しながら言葉を続けた。
「嬢ちゃんが持って来たんだが、フタが固すぎて開かないんだ。」
「ロディでも開かなかったのかよ?」
ロディが、レイに小瓶を手渡す。
っ!
「あっ…!」
つい声を出すと、二人は一斉に私を見た。
「ん?嬢ちゃん?」
「どうした?ルミナ。」
どくん…!と胸が鳴る。
体がこわばって、動揺を隠せない。
「何でも…ない…。」
そう、口では言いながら
心の奥に迷いと不安が込み上げる。
…こんな試すようなこと、ダメなのは分かってる。
嫌な胸騒ぎがする。
止めなくちゃ……。
言わなくちゃ……。
ルオンの言ったことは、私を翻弄するための嘘かもしれない。
レイは……
レイは、ギルじゃ………!
その時
レイが小瓶のフタに手をかけた。
はっ、と呼吸が止まる。
…ギュル…!
「!」
レイがフタを回した瞬間
フタは何の抵抗もなく溝を滑る。
どくん!!
時間が、止まったような気がした。
息も出来ずに、目を見開く。
ロディが、感嘆の声を上げた。
「お、レイすごいじゃないか。」
「あ?どこが固いんだよ。
こんなのも開けられないなんて、ルミナもロディも握力ねぇな。」