闇喰いに魔法のキス
「ログハウスに近寄れないの?」
私が不安になって尋ねると、レイは、さらりと答えた。
「大丈夫だ。俺の後についてこい」
レイは、ゆっくりと足を踏み出す。
レイがわざわざ避けて歩くってことは、闇避けの魔方陣って言っても訪問者避けってことなのかな?
レイの歩くコースから一歩でもはみ出せば、攻撃されちゃうってことだよね…!
レイに置いて行かれないように、私は緊張しながら付いていく。
やがてログハウスの扉の前まで来た私は、レイの隣でふぅ、と息を吐いた。レイは扉の前で小さく呼吸をすると、ドンドン!と扉を叩く。
「おーい、俺だ。レイだよ。千歳草を貰いに来たんだ、開けてくれ」
しかし、ログハウスの中からは物音ひとつしない。
「留守なの…?」
すると、レイは「いや、あいつは面倒くさがって出てこないだけだ。」と答える。
その時、レイは大きく息を吸い込むと扉に向かって大声で叫んだ。
「モートン!居留守使ってんじゃねぇ!!五秒以内に出て来ねぇと、扉ぶっ壊すぞ!」
レイの言葉に目を見開いた次の瞬間、バン!と扉が開いて白衣の男性が飛び出してきた。
そして、私たちが口を開く前に慌てた口調で話し出す。
「レイ君、やめて下さい!扉を直すの大変なんですから…っ」
す、すぐに出てきた…。
私は、目の前に現れた白衣の男性を、じっと見つめる。
髪の毛はカールがかったふわふわの淡い茶髪。長く伸びた前髪はちょうど目元を隠すくらいで、顔はよく見えない。
モートンさん、って名前なんだ。
レイはため息をついて口を開く。
「いるならさっさと出てこいよな。千歳草を少しくれないか?こいつが怪我してんだ」
すると、白衣の男性はまじまじと私を見た。
私は、彼に小さく頭を下げて口を開く。
「初めまして、ルミナです。研究のお邪魔をしてすみません…!」
すると、彼は少し驚いたように口を開いた。
「もしかして、君がルミナさんですか…?ラドリーの娘の…?」