闇喰いに魔法のキス
…!
俺は、言葉が出てこなかった。
ロディから語られた言葉に、胸が熱くなる。
…未来の結末によっては、俺はロディの隣から永遠に姿を消すことになる。
自分の背負った罪を償わないまま、ロディだけに全てを背負わせることになる。
この二年間、ずっと一緒に戦ってきてくれた相棒に、何も返せないまま…
ロディが、ふいにコートの胸ポケットに手を入れた。
タバコの箱を取り出すが、フタを開けて微かに目を見張る。
…?
ロディ…?
車の中に、沈黙が流れた。
俺が、ロディを見つめていると
ロディは微かに笑って、小さく言った。
「…はっ。気を紛らわせる為にタバコ吹かしてたら、もう一本も残っちゃいねぇ。
レイのせいだぞ…。俺、今まで一度もタバコ切らしたことないのに。」
!
苦笑しながら眉を寄せて俺を見たロディに
俺は目を見開いた後、まばたきをした。
ロディが、こんなに余裕をなくしているのを見るのは初めてかもしれない。
お互い数秒無言で見つめあった後
ふっ、と笑い出す。
ロディが、はぁ、とため息をついて言った。
「こんな気持ちになるのは、ラドリーさんが亡くなった時以来だな。」
「ロディ。俺はまだ生きてるぞ。
勝手にこの世から消すな。」
ロディは、俺の言葉に、ふっ、と笑うと
「ん、悪い。」と呟いた。
そして、ゆっくりとハンドルへと手を伸ばす。
「よし、行くか。
…つい喋りすぎた。」
そう言ってアクセルを踏み込むロディの横顔は、どこか吹っ切れたようだった。
俺は小さく頷いて、窓の外へと視線を向けた。
…必ず、帰ってこよう。
この先に、何があったとしても…!
赤い車は、エンジン音を響かせながら
街外れへと走り始めたのだった。
《レイside終》