闇喰いに魔法のキス
扉へと全員が視線を向けると
そこにはコートを着たレイの姿があった。
!
レイが、帰ってきた…!
レイの顔を見た瞬間、安心感が胸に広がる。
「レイ、おかえり!」
「!」
私がそう言った瞬間
レイは驚いたように目を見開いて私を見つめた。
…?
ルオンが、私から手を離すと
レイはコツコツと酒場の中に入り、私の前に立った。
そして、レイは私に向かって口を開く。
「ルミナ、今、俺の名前を……
まさか、スープを飲んでないのか…?」
!
私は、レイの言葉に、はっ!として答える。
「うん。
レイがご飯を食べた後がなかったから、レイが帰って来てから一緒に食べようと思って待ってたの。」
私の言葉に目を見開いて、急に動揺しだしたレイに、私は尋ねた。
「…どうして私が飲んでないって分かったの?」
すると、レイは眉を寄せ、険しい顔をした。
無言になってしまったレイに、私は少し違和感を覚えながら話を変える。
「そういえば。
レイ、今までどこに行ってたの?」
レイは、私の言葉に険しい顔のまま答えた。
「…ラドリーさんの墓参りに行ってたんだ。
ごめんな、何も言わないで。」
!
「お父さんの…?」
レイのコートからは、微かに線香の匂いがした。
どうして、急にお墓まいりなんて…。
酒場に、沈黙が流れた。
誰も、一言も発しない。
ロディたちは、不安げにレイの背中を見つめている。
…何…?
今日のみんな、どこかおかしい。
その時
レイの低い声が、酒場に響いた。
「ルミナ。話がある。
…落ち着いて聞いてくれ。」
「え…?」
真剣味を帯びた彼の声に、私はびくっ!として答える。
「うん。何…?」
躊躇しながら尋ねると
レイは真剣な瞳で、私が予想だにしていなかった言葉を発した。
「ルミナ。今日から、元いた家に戻ってくれないか。
お前とは、もう暮らせなくなった。たぶん俺は、もう酒場には帰って来れない。」
!
一瞬、言葉が出なくなった。
レイの言葉の意味が分からず、私は動揺しつつレイに尋ねる。
「どういうこと?
ちゃんと、最初から説明して…?」
少しだけ、声が震えた。
自分で聞いておきながら、レイの答えを聞くのが怖い。
決して、いいことではないと分かるから。
その時
小さく呼吸をしたレイが、沈黙を破って口を開いた。
「ここにいる俺たちは全員。
今から、タリズマンの本部へ行くんだ。」
「え…?」
私以外のその場にいた全員が顔を伏せた。
レイは、私から視線を逸らさず
一言、呟いた。
「俺たちは今日、“処刑”される。」
!!
………しょ…け、い…?