闇喰いに魔法のキス



深青の長髪の男性の言葉に、ワインレッドの髪の青年も真剣な顔をして私を見た。


私は、心臓が鈍く鳴り出した。



もう、こうなったら仕方ない…!



私は、意を決して彼らに向かって叫んだ。



「わ、私っ、実はタリズマンに捕まってここに来たんです!犯罪者なんです!」



「「!」」



私の言葉に、長髪の男性は低く言う。



「さっき君が一人でここに入ってくるのを見たんだが?」



「それは見間違いです!

私、すっごい悪党です!」



もう、ここまで来たら後には引けない。


レイが捕まった時のことを思い出して、話を繋げるしかない!


私は、不信感が募っているであろう彼らに向かって言葉を続けた。



「事情聴取で、書類を書かなきゃいけないんです!

その部屋が分からないので、捕まった人が連れて行かれる部屋に私を連れて行ってくれませんか!」



「…何を言ってるんだ。タリズマンが犯罪者から目を離して、本部を自由にウロつかせるわけないだろう。

ここらで諦めて外に出ないと、本当に逮捕されて地下牢に入れられるぞ。」



私は、そう呆れたように言った長髪の男性に

ばっ!と飛びついて訴える。



「そこです!地下牢に連れて行ってください!」



「な、何なんだ、あんたはっ?!」



必死な私に動揺する長髪の男性を見て、隣のワインレッドの髪の青年は笑い出している。



…お願い!

もういっその事、私を捕まえて…!



と、私が祈った

次の瞬間だった。



「…ルミナさん?」







はっ!として振り返ると

そこには書類を手にしたミラさんの姿があった。


私は、すっ、と男性の制服から手を離す。


コツコツ、と私たちに歩いてきたミラさんにワインレッドの髪の青年が声をかけた。



「あ、ミラちゃん、久しぶりだね。

この面白い子、ミラちゃんの知り合い?」



長髪の男性は、眉を寄せてミラさんを見つめている。


二人と面識がある様子のミラさんは、私の肩に手を置いて答えた。



「そうです。

彼女はこれから始まる法廷の関係者なので、私が預かりますね。」



“法廷”…?


まさか、レイたちの裁判ってこと…?



すると、彼らは納得したように息を吐いて、私に背を向けて歩いて行った。


彼らの会話が小さく聞こえる。



「どこの国にも、度胸のある女の子がいるもんなんですね。

あー、名前聞いとけばよかった。」



「うるさいぞ、レオ。

視察は終わりだ。遊ぶ暇もなく報告書を書くから覚悟しとけ。」



私は、彼らが本部を出て行った後

ふぅ、と息を吐いた。



…き、緊張した……



私は、ミラさんの方を向いて口を開く。



「ミラさん、ありがとうございます。

ミラさんが来てくれなかったら、私、本当に捕まるところでした…!」



すると、ミラさんは、なぜ私がここに来たのか、全てを察したように私に向かって言った。



「…レイ君たちに会いに来たのよね?

ついてきて。特別に傍聴席に入れてあげる。あなたは、ギルの裁判と無関係ではないから。」







私は、ミラさんに向かって頭を下げた。


そして、そのまま彼女についていく。



……法廷に、入れる…。


レイたちに、会える…!



私は、ぎゅっ、と手のひらを握りしめて

確かな足取りで本部の廊下を進んで行ったのだった。


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