闇喰いに魔法のキス
「レ…レイ?」
私が、彼の名を呼んだ
次の瞬間だった。
「ルミナ───っ♡」
「きゃ───っ?!」
レイが、がばっ!と私に抱きついた。
ごろごろと甘えるレイ
急激に体温が上昇する私
一瞬で真顔になるロディ
え、え、え
ななな、何っ?!!
レイは、私をぎゅうっと抱きしめながら言う
「お前、ほんと可愛いな♡
もう、ぜったい離さねぇ♡」
!!!
ドカン、と私の心臓が爆発した。
レ…レイっ?!!
ど、どうしちゃったの?!
すると、今まで沈黙を貫いていたロディが、眉を寄せて口を開いた。
「まさか、一口で酔っ払ったのか…?
…ここまで酒が弱かったとは。」
しみじみと言ってる場合じゃないよロディ!
焦る私をよそに、レイは私に抱きついたまま好き勝手話し出す。
「ダウトなんて、全然怖くねぇっ!
全員まとめて、ぶっ倒してやるーっ!」
「ダウトはもうお前が全員倒しただろ。
ってか、お前はもう魔法使えないから戦えないぞ。」
ロディ!
だから、真面目に返してる余裕はないって!
レイは、にこにこしたまま口を開く。
「あー、そうだった。俺、ギルやめてロディと同じ人間になったんだぁ。
あはは!胸の傷もお揃いだぞ、ロディ〜」
「何が“お揃い”だ。正気に戻れ!」
わわわっ!
“ダウト”とか、“ギル”とかやめてーっ!
周りの人に聞こえちゃうよーっ!
私の様子に気づいたロディは
ふぅ、と息を吐いて早口で言った。
「嬢ちゃん。悪いが、もう帰るぞ…!
この酔っ払い、早くここから連れ出さないと何言い出すか分からない。」
そ、そうだよね。
ロディは、すっ、と店員を呼びつけて、私に言った。
「嬢ちゃん。
レイのコートから財布取ってくれ。」
え?
私は言われるがままに、抱きついて離れないレイのコートのポケットから財布を取り出す。
それを受け取ったロディは、中からお札を引き抜いて店員に渡した。
「これで足りるか?」
「はい、十分です。
今、お釣りを……」
すると、ロディは店員の言葉を遮って低く艶のある声で言った。
「釣りはいらない。俺の金じゃないからな。
騒がしくして、悪かった。」
!
ロディは、レイをぐっ、と引っ張り私から引き離すと
レイの腕を肩に回して歩き出した。
…確かに、お釣りとか言うよりも早くお店を出た方がよさそう。
私は、ぺこり、と店員さんに頭を下げて
二人の後を追って店を出たのだった。