闇喰いに魔法のキス
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「ふふ、ふ♩ふーん、ふふ♫」
鼻歌を歌いだすレイを、眉間にシワを寄せたロディが支えて歩く。
レ…レイ。
こんなレイ、初めて見た。
レイの顔はいつものポーカーフェイスと違って、子どもみたいにニコニコしてる。
ちょっと…
いや、だいぶ可愛い…。
私がレイの顔を見つめていると
ロディがため息をつきながら言った。
「外で酒を飲ませるんじゃなかったな。
もう、酒場でもコイツに酒を飲ませるのはやめよう。」
…!
確かに、酔う度にこんな感じになってたら
私、心臓もたないかも…。
“お前、ほんと可愛いな♡
もう、ぜったい離さねぇ♡”
うっ!!
レイの言葉が、頭の中でリピートされる。
あの悪魔から、あんな甘い声聞いたことない
無邪気…っていうか、甘えてる子どもみたいな声。
…普段は聞けないレアボイスだ。
絶対忘れないでおこう…。
その時
ロディがレイに向かって声をかけた。
「おいコラ、しっかり歩けっ。
…ふー。今日は酒を飲むから車じゃないのがデカイな。魔法が使えたら、瞬間移動魔法で一発なんだが。」
!
確かに、瞬間移動魔法なら
ロディが頑張ってレイを引っ張って歩かなくても、一瞬で酒場まで帰れる。
以前のレイなら使えたんだけど…。
…まぁ、使えたら使えたで、今のレイはいろんなトコに飛んじゃいそう。
するとその時
急にレイがしょぼん、として鼻歌をやめた。
そして、寂しそうな声で呟く。
「そぉなんだよ…俺、すげー役立たずになっちまった…。
闇とも、もう戦えねぇもん…。」
…!
こ、今度は“泣きモード”…?!
可愛いけど…っ!
すると、ロディはレイに向かって言った。
「仕方ないだろ。今までの罪を償わなきゃいけないんだから。
…まぁ、これから何があったとしても、俺がお前の“右腕”でいてやるから安心しとけ」
!
ロディ…。
やっぱり、二人は最高の相棒なんだね。
その時
レイが、ぱっ!と笑顔になって、そのままロディの腕を掴んだ。
「おー、やっぱりロディはかっこいいなっ!
惚れ直したっ♡」
「黙れ、酔っ払い。
…っ、あーもー、離せバカ…!」
ロディがレイを振り払った所で
ちょうど目の前に酒場の赤い屋根が見えてきた。
酒場の前まで到着し、私が扉を開けると
ロディはレイをソファの上に放り投げた。
「っ!」という声とともに、レイの体がソファへ沈む。
ロディは肩に手をやりながら、私に向かって口を開いた。
「悪いが嬢ちゃん、後は頼むな。
水飲ませてほっとけば元に戻ると思うから」
「あ、分かった!
ありがとう、ロディ…!」
私の言葉に、ロディは小さく笑って
タバコを片手に酒場を出て行った。