闇喰いに魔法のキス
モートンは、私の言葉に、はっ!としたように動きを止めた。
そして、少しの沈黙の後ゆっくりと口を開く。
「ルミナさんの察しの通り、ギルの魔法はこの魔法書に載っている闇魔法です」
私は、その言葉に顔がこわばる。
私を守るために、ギルは自分を犠牲にして闇と戦ってくれたんだ。
今、私の見えないところでギルが傷に苦しんでいたらどうしよう…!
命が危ないなんてことになっていたら…!
すると、モートンは私に一歩近づいて、私を落ち着かせるような声で言った。
「大丈夫です。ギルの闇魔法のリバウンドは先払い制なので」
そのセリフに、動きが止まった。
その意味がよく分からない。
「ですから、今のギルにはなんの影響も……………」
「おい、くだらねぇ話はもう終わりにしろ。」
モートンが何かを言いかけた時、レイの声が私たちの会話を遮った。
はっ!として、レイの方を見る。
レイは、感情を悟らせないような表情でまっすぐ私とモートンを見ていた。
レイは、動揺する私の手を握って、ぐっ!と引っ張る。
「長居しすぎた。行くぞ、ルミナ」
「えっ!」
レイは、私の手を引いたままスタスタと歩き出す。
ま…待って…!
まだモートンの話を最後まで聞けてないよ…!
ギルにとっても、私にとっても大事なことが聞けるような気がしたのに…!
レイはそのまま歩き続け、ログハウスの扉をギィと開けた。
その時、背中の方からモートンの声が聞こえる。
「ルミナさん、また何かあったらいつでも来てください。あ!ギルは、僕より百倍いい男ですから、彼のことは本当に心配しないでいいんですよ」
また、来てもいいんだ…!
モートンの気遣うような優しい言葉に胸がいっぱいになる。
すると、眉間にシワを寄せたレイは、ログハウスを出る寸前、モートンに向かって大きな声で言い放った。
「もうあんまぺらぺら喋りすぎんなよ、ジジイ!あとなぁ、ギルはお前より百万倍いい男だっつーの!覚えとけ!!」
暴言を吐くレイに動揺しつつ、手を振るモートンに見送られながら、私とレイはログハウスを出て深い樹海へと入って行ったのだった。