闇喰いに魔法のキス
*月明かり、時計台の下で
「ルミナ、モートンとあんまり仲良くなるなよ。あいつは研究中は睡眠も食事も忘れる、とにかく常識はずれの変人だ。バカがうつるぞ。」
街に戻ってきた私とレイは、二人並んで歩きながら会話をする。
「モートン、いい人だと思うけど…」
「だめだめ。ルミナはもっといいやつと友達になれ」
レイはどこか落ち着かない様子で歩いている。
「ねぇ、レイ。レイもギルと知り合いだったんだね」
私の言葉に、レイは動揺したように目を見開いた。
私、変なこと聞いたかな?
私がきょとんとしていると、レイは私から目をそらして小さく答えた。
「まぁな。…顔見知り程度だけど」
へぇ、そうなんだ…。
少し雰囲気の変わったレイを見上げていると、レイのコートのポケットから、ブブブとケータイの鳴る音が聞こえた。
レイは手に取ると、そのまま画面を指で操作し、耳に当てる。
「…もしもし。…あぁ、もう調べたのか?さすが、仕事が早いな」
誰と話しているのか、私にはわからない。
ただ、レイは少し真剣な表情で喋っている。
「あぁ。“今夜八時、時計台”な。俺は酒場に戻らずそのまま向かう。…お前もちゃんと来いよ?」
レイはケータイを耳から離すと、そのまま通話を終わらせてポケットにしまい込んだ。
「レイ、用事があるの?」
私が尋ねると、レイは少し口ごもり、そしてポーカーフェイスで口を開いた。
「あぁ、友達がいい店を調べてくれたんだ。今夜食事をする待ち合わせの電話だよ」
あ、プライベートの電話だったんだ。
てっきり、真剣な表情をしているからお仕事なのかと思った。
…って、今日会ったばかりの人にプライベートのことを聞くなんてちょっと失礼だったかも。
私は、それ以上のことは聞けずに、それから無言で歩き続ける。
レイ、たぶん忙しいよね。
ロディに頼まれたから送ってくれてるだけで、実は私に付き合ってる時間はないかもしれない。
私はレイの前に進んで、彼に向かって言った。
「レイ、送ってくれてありがとう。もう家の近くだから、ここで大丈夫」