闇喰いに魔法のキス
その時、ギルが少し低い声で私に言った。
「君を守ると約束したのに…昨日は僕がうかつだったせいで、ルミナを危険な目にあわせてしまった」
「ギルのせいじゃないわ…!」
私の言葉にギルは困ったように笑うと、強い決意を秘めた声で、言葉を続けた。
「これから、闇はさらに積極的にルミナに近づいてくるかもしれない。僕の手の届かない範囲でね」
「…っ!」
私が、ふっと顔をこわばらせたその瞬間、ギルは私の手を、ぎゅっ!と握った。
ギルと触れ合っている手から、熱が体じゅうに広がる。
ギルの綺麗な薔薇色の瞳が私をとらえ、優しく、はっきりとした声が耳に届いた。
「だから、僕が闇と決着をつけ終わるまで、ルミナには酒場にある離れで暮らしてもらいたいんだ」
「えっ?!!」
キキキィッ!!!
その時。
今まで黙って話を聞いていたロディが動揺したようにハンドルを、ぐんっ!と動かした。
車が大きくスリップする。
「きゃぁっ!?」
「おい、ロディ!?」
私とギルが後部座席で叫ぶと、ロディは強くブレーキを踏み込んで森の中で車を停車させた。
し……死ぬかと思った………っ!
その時、ロディが珍しく取り乱したように、こちらへと身を乗り出して叫んだ。
「ギ…ギル、何言い出すんだ?!お前、嬢ちゃんに存在がバレたからってそんな…」
ロディの言葉に、ギルは「落ち着けって」といつもの笑みを浮かべる。
「ルミナが僕の守れる範囲にいつもいてくれたら、闇も簡単には手出し出来ないかなって思ったんだよ。…ロディ、僕がルミナと一緒に居たいから、言い出したと思ってる?」
「ギル、お前ラドリーさんに、娘に手は出すなって言われてただろ!」
お…お父さんがそんなことを…!
私は、かぁっ!と顔が赤くなる。
というよりも、手は出されてないし、ギルにもそういう気はないと思うけど…。
その時、私はふと考える。
ロディは、酒場に通っているから、他に家があるんだよね?
あの酒場はレイだけが住んでいるのかと思っていたけど…
私は、言い合いを始める二人に向かって尋ねた。
「ギルも、あの酒場に住んでるの?」