闇喰いに魔法のキス



私は、ぽつり、と呟いた。



「うん……そうだよね。

ごめんなさい、変なこと聞いて………。」



すると、扉の向こうから、感情を隠すようなレイの声が聞こえた。



「…俺も、大きな声を出して悪かった。

…今日はこのまま帰ってくれ。」



…!

…………。



私は、小さく「わかった。」と返事をすると

そのままレイの部屋から背を向けて歩き出した。


外套は、軽くたたんでレイの部屋の扉の横に置く。


レイの部屋からは、何の物音も聞こえなくなった。


私は、無意識に、ぎゅっ、と手のひらを握りしめる。



………レイ。

私、今、レイの顔が見たいよ。


そうしたら、この胸の違和感が全て無くなるかもしれないのに…。



「………ごめんな、ルミナ…。」



部屋の中でレイが小さく呟いた言葉が

私に聞こえることはなかったのです。



****



ピチチチ…。



部屋の窓から陽の光が差し込んで

小鳥のさえずりが優しく聞こえる。


あれから自分の家へと帰って来たが、まともに眠れた気がしない。


疲れてベッドに横たわっても、頭の中に蘇ってくる記憶が

私を眠りの夢から引きずり上げるのだ。


夢か現実かわからないところで、ぼーっ、としていると

ピンポーン、と家のチャイムが鳴る音がした。



…!



私は、反射的にベッドから起き上がり

駆け足で玄関へと向かった。



ガチャ…!


勢いよく扉を開けると、そこには漆黒の髪の青年が立っていた。



「おはよう、嬢ちゃん。

…大丈夫か?眠れてないみたいだな。」



「ロディ……!」



私は、その顔を見た瞬間、ロディに尋ねる。



「昨日は大丈夫だったの…?」


「あぁ。タリズマンにはうまく誤魔化しといた。

…結構長い時間、質問攻めにされたけどな」



ロディは軽く笑ってそう答えた。



…よかった。

ロディが無事で……。



その時、黄金の髪の青年の姿が頭に浮かぶ。



……ギル、大丈夫かな…。



すると、ロディは私が考えていることを見透かすかのように言葉を続けた。



「ギルなら無事だ。

傷も塞がって、命の危険はなくなった。」






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