闇喰いに魔法のキス
その時
ロディのコートからケータイの鳴る音が聞こえた。
私はその音に反応して、ゆっくりと立ち上がる。
ロディがポケットから、すっ、とケータイを取り出して画面を見ると
そこには“レイ”の文字が見えた。
…!
レイから電話……!
急に胸がドキドキ、と鳴り出した。
ロディが長い指で画面を操作し、ケータイを耳元へと運んだ。
「もしもし。」
『!…ロディ、俺だ。
今どこにいる?』
「おぅ、今、嬢ちゃんに会ったところだ。
今から酒場に向かう。」
私には、レイとロディの会話が聞こえない。
…レイ、昨日のことどう思ってるんだろう?
『…ルミナ、どうだ?
俺のこと、ギルだって疑ってるか?』
「…いや、何とか誤魔化せたが…。
…これからは同居するんだぞ?もう隙は見せるなよ。」
ぼそぼそと続く会話に、私はただロディの横顔を見つめるだけしか出来ない。
…何を話してるんだろう…?
『なぁ、ロディ。
すごく大事な相談なんだけど……』
「…?何だよ、改まって。」
『ピンクがいいかな?
それとも、今どきの女の子って白がいいのか?』
「……何の話だ?」
…?
ロディが眉間にシワを寄せている。
『ルミナ用の茶碗とか、箸の色だよ。
あ、離れにはカーテンが無かったな!カーテンもつけよう。』
「…お前、嬢ちゃんと暮らせるからって実は浮かれてるだろ!
新婚じゃあるまいし…!」
『う…浮かれてるわけないだろ。
なぁ、もこもこのクッションとかもいるかな?』
「…………知るか。自分で考えろ。」
ロディが呆れたような顔をしている。
『ロディ!お前情報屋だろ!!
ルミナの好みくらい調べとけよ!!』
「うるさい。俺はギルの情報屋であって、お前の情報屋じゃない。
プライベートの面倒まで見きれるかっ…!嬢ちゃんに直接聞け。」
『ふ…ふざけんな!本人に聞いたりしたら
俺がルミナに興味ないフリしといて、実はめっちゃ考えてたってバレるじゃねぇか!』
「…はぁ。……心の底からめんどくさい。
本当にお前、嬢ちゃんのこと好きだよな。」
『ち…違……ぅ。
バカ!そんなんじゃねぇって…!!!!!』
け…ケンカ…?