闇喰いに魔法のキス
第1章*悪魔と情報屋
翌日。
綺麗な青空が広がる昼下がり。私は一人、サンクヘレナの街を歩いていた。
昨日の出来事が、頭から離れない。
黄金の髪の毛に、薔薇色の瞳の青年の姿が頭に蘇る。
ギルという名しか手がかりがないけど、もう一度彼と話がしたい。彼のことをもっと聞いておくべきだった。
どうして私を助けてくれたのか、どうして私の名前を知っていたのか…、聞きたいことは山ほどある。
忘れろと言われたけれど、そんなことできるはずがない。
もう一度会って、ちゃんとお礼を言わなくちゃ。
それに、父の遺したシンという闇魔法のことも、闇喰いのギルなら詳しく知っているかもしれない。
でも…一体、どうやって彼に会えばいいんだろう?
私が頭を悩ませながら歩き、一軒の花屋の前を通りかかった時、ちょうど花屋の前で話し込む男性たちの声が聞こえてきた。
「最近、いろいろな場所で闇が好き勝手に暴れているみたいだな」
「あぁ。どうやら闇達の中には、大きな組織を作って活動してる奴らもいるらしいぞ」
大きな組織…?
私は、ふと足を止める。
そういえば、昨日私を襲った闇も上下関係があるみたいだった。
リオネロ達も、組織の一員なのかな…?
男性達は話を続ける。
「はぁー。この街の治安はタリズマンが守ってくれているとはいえ、いつ襲われるか分からないのは心配だよなぁ」
「せめて、闇達の詳しい情報が分かればいいんだけど…」
その時、男性の一人が、はっ!としたように顔を上げた。
「そういえば、あくまで噂なんだが…この街には、調べられないものはないという凄腕の情報屋がいるらしいんだ」
「あぁ!“黒き狼”だろ?奴に依頼すれば、闇の情報なんてすぐに手に入るだろうな」