闇喰いに魔法のキス
すると、シルバーナさんは笑いながら答える。
「いいえ、謝るのはむしろ私の方ですわ。
“偽ギル”の彼氏のことでも、酒場の皆さんには迷惑をかけましたし。」
私は、はっ!としてシルバーナさんに言った。
「あの時は、レイが失礼なことを言ってすみませんでした。
…あの…ショックだったとは思いますが、シルバーナさんは素敵な方です。もっと相応しい男性がいますよ!絶対!」
その時、私の言葉を聞いたシルバーナさんがふっ、と笑って呟いた。
「…確かに、“偽ギル”は本物とは呼べないほどのクズでしたわ。
だけど、そのお陰でルミナさんに近づけました。」
え……?
私は、ぴくっ、と反応をする。
…今、なんて…?
今までのシルバーナさんとは思えない口調が聞こえた気がした。
その時、階段の終わりが目に入った。
そこには、今まで進んできた豪華な装飾は
一つもない。
扉はなく、ろうそくが地下室を照らしている。
石造りで、温かみの欠片もない。
そう、まるで……
“牢屋”みたいな……………
私が違和感を感じながらも、石造りの地下室に足を踏み入れた
その時だった。
ドッ!!
「きゃっ!!」
いきなり後ろから突き飛ばされ、私は石造りの床へと倒れ込んだ。
ひんやりとした温度が体へと伝わり、それと同時に、頭の中が真っ白になる。
「し……シルバーナさん…?」
動揺して彼女を見上げると
そこには見たこともないほどの冷たい瞳をしたシルバーナさんが立っていた。
ぞくっ…!
体に震えが走る。
私が恐怖を感じた、その時
シルバーナさんは、ふっ、と笑って口を開いた。
『……本当に単純な娘ね。
コロッ、と私を信じきっちゃって。』
聞いたこともない低い声が私の耳に届いた。
……この人は…誰…?
本当に、シルバーナさんなの…?
私が言葉を失ってシルバーナさんを見上げていると
彼女は、ゆっくり私に近づいた。
ぐっ!とあごを持ち上げられる。
「…っ!」
恐怖で体がこわばった瞬間
シルバーナさんは瞳を輝かせながら言った。
『偽ギルなんて、どうだっていいのよ。
…あなたの仲間からあなたを遠ざけて、ここに誘導できれば、“シン”は私のもの…!』
!!
その時、私は全てを理解した。
シルバーナさんが、酒場を立ち去る前に言った言葉。
“ルミナさんは、必ず来てくださいね。
もちろん、可愛くお化粧をして。”
私は、唇を噛み締める。
最初から私が目的だったんだ…!
シルバーナさんは、シンを狙う“闇”…?!
私は、掠れる声で尋ねた。
「あなたは…ダウトの幹部なの…?…!」
するとシルバーナさんは、ぐっ!と私に近づいて笑みを浮かべながら答えた。
『そうよ。
…全ては、エンプティ様のため。かわいそうだけど、あなたには犠牲になってもらうわ。』