闇喰いに魔法のキス



どくん…!


危険を感じて心臓が大きく低い音を立てた。



もう、この人は優しいお嬢様の“シルバーナさん”じゃない…

れっきとしたダウトの幹部“シルバーナ”だ…!




「っ!!」




ばっ!とシルバーナの手を振り払って、私は彼女から距離をとる。



そして、私は微笑を浮かべるシルバーナを、キッ!と睨みながら口を開いた。



「私からシンを奪って、どうするつもり…?

ダウトの目的は何なの…?」



その時、私の言葉を聞いたシルバーナが腕組みをして答える。



『“目的”?そんなの決まってるわ。

エンプティ様にシンを差し出して、エンプティ様の復讐を完成させるの。』



…“エンプティ様”…?


確か、リオネロの口からも同じ名前を聞いた。


…ダウトのボスの名前…?



その時、シルバーナが私に向かって

ゆっくりと歩み寄り始めた。



ぞくっ!



体が震える。



彼女は、獲物を狙うような鋭い瞳を私に向け言い放つ。



『さぁ、大人しくシンを渡しなさい。

屋敷の周りには、今だに闇避けの電磁波が放たれているはず。あなたを守る“騎士”は来れないわ。』






私は、その言葉に、はっ!とした。



…ダウトが屋敷に入って来られたのは、闇避けの電磁波を放っていた警備装置が壊れたからじゃなくて

シルバーナが裏で糸を引いていたからなんだ…!



“騎士”って…ギルのこと…?

ギルは、ここに来れない…?



私は、初めて命の危険を感じた。



もし、このまま私が抵抗し続けたら

一生ここから出してもらえないかもしれない。



最悪の場合

リオネロの時みたいに無理やりシンを奪おうとしてくるかもしれない…!



とっさに辺りを見回す。

そして、地下室の隅にあったモップを掴んだ。



ザッ!と、モップの柄をシルバーナに向ける。



シルバーナは、『威嚇のつもり…?』と小さく笑った。



私は、震えながらもシルバーナを睨み、立ち上がった。



…ここで怯むわけにはいかない…!

私一人で、何とかしなくちゃ!



ロディは私を守ろうと、外で戦ってくれてる。


ギルも、今までずっと私を守ってきてくれた。



その人たちの思いを無駄にはさせない…!

シンを渡すもんか…!



その時、シルバーナが私に向かって腕を突き出した。



ぐわっ!とシルバーナを取り巻く空気が変わる。






魔法を使うつもり…?!



と、次の瞬間

シルバーナの手から黒いイバラが放出された。



私に向かって、すごいスピードで迫ってくる。



「っ…!!」



私は、無我夢中でモップを振り回し抵抗する。

しかし、柄ごとイバラに絡め取られ、モップを力ずくで取り上げられた。



…まずい…!

もう武器がない…っ!



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