闇喰いに魔法のキス



シルバーナは、勝ち誇ったような笑みを浮かべて口を開く。



『ふ…。モップごときで抵抗したって全くの無意味よ。

さっさとシンの魔力を私に渡しなさい。…次は死なない程度に八つ裂きにするわよ。』



…!!



極度の緊張状態が続く。



…シルバーナは、本気で私に攻撃する気だ。

入り口も塞がれてて、逃げられない。



こうなったら、ヒールを投げつけて………!



と、私が足元に手を伸ばした

その時だった。




ビーッ、ビーッ、ビーッ



「『?!』」



緊急事態を知らせる警報が地下室に鳴り響いた。


シルバーナが、動揺して口を開く。



『な…何事…?!

地上で何が起こったの…?!』



すると、コツ、コツ!と駆け足で階段を降りてくる足音が聞こえた。



ばっ!と音のする方へと視線を向けると

そこには一人の黒マントの姿。



『シルバーナ様、大変です!』



『一体どうしたの?!

ってそれより、あなたどうしてここに降りてこれたのよ?!』



…ダウトの部下?

私が警戒しつつ見つめていると、黒マントは上を指差しながら言った。



『パーティ客の奴らがどうやら通報したようで、外にタリズマンが集まってきています!

ここに居るのは危険です!』



『な、なんですって?!』








私は、それを聞いて目を見開いた。



タリズマンは、闇の魔力は持っていない…!

屋敷の中に入れるはずだ!



シルバーナは、悔しそうに唇を噛んで叫ぶ。



『く…っ!こうなったらこの女をダウトの基地まで連れて行くわ!

タリズマンが来る前に逃げるわよ!』






シルバーナに命令された黒マントは

私をちらり、と見た。



どくん!と心臓が鳴る。



…捕まるわけにはいかない!



この黒マントが入って来たなら、入り口の扉は開いているはずだ。


何としてでも、ここから逃げ出す…!



私は、決死の覚悟で走り出した。


そして、地上の騒ぎに気を取られていたシルバーナに思いっきり体当たりをする。



『ぎゃあっ!』



ドサッ!!と勢いよく地面に倒れたシルバーナを飛び越え、私は階段に向かった。


黒マントは、驚いたように固まっている。


シルバーナが、私の背後から黒マントに叫ぶ。




『…っ!その女を捕まえなさいっ!』




…!



黒マントは、その声に、はっ!として私を見た。



私は、ばっ!と履いていたヒールを手に取り

一つを黒マントに向かって投げつけた。



『っ!』



黒マントが怯んだ一瞬をついて

私はもう片方のヒールを握りしめ黒マントに向かって振り上げる。



とにかく、かかとの尖った部分で攻撃して、黒マントを突破するしかない!



しかし

黒マントは、私の捨て身の攻撃をひらり、とかわし、私の腕を掴んだ。



「!!」



その瞬間、恐怖が蘇る。



ダメだ…っ!

攻撃される……っ!



と、私が痛みを覚悟し

目をつぶったその時。



黒マントは、そのまま私を引き寄せ

ぎゅうっ!と抱きしめた。



「……っ?!」



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