闇喰いに魔法のキス
*お願いがあるの
その言葉を聞いた瞬間
ギルは目を見開いて固まった。
私は、ギルから目が離せない。
…ギルの瞳は、どんなに輝きが弱くなったって“薔薇色”のはずだ。
でも、目の前のギルの瞳は海のような“碧色”をしている。
そう、まるで
“レイ”みたいな…………
と、その時
ギルが、まるで私の視線を遮るように、私に外套を、ばっ!とかけた。
とっさのことに、私は驚いて目を閉じた。
その時、近くで少し震えたギルの声が聞こえる。
「ごめん、ルミナ。今は君を助けるために、シルバーナを消すしかない。
…少しの間、じっとしてて。」
!
私が、はっ!とした
次の瞬間
私を包む空気の変化を感じた。
外套で視界を遮られているせいで、辺りの様子は見ることが出来ない。
『ぐ…っ…!!』
シルバーナのうめくような声が聞こえた。
しかし、それは一瞬の出来事で、すぐに何も聞こえなくなる。
私の頭の中に、ギルと初めて会った時の夜の光景が浮かんだ。
…あの時、ギルは一瞬で闇たちを消していた
まさか、もうシルバーナを消してしまったの…?
するとその時
ふっ、と、私の体の力がさらに抜けたような感覚がした。
!
シルバーナの闇魔法は、まだ少し残っているんだ…!
薄れゆく意識の中、必死でギルに声をかける。
「…ギル、ごめんなさい…。
また、私のせいで闇魔法を使わせてしまった…」
私は、返事のないギルに向かって言葉を続ける。
「胸の傷は、大丈夫…?もう、ギルを私の盾にしたくない…。
…あなたに、死んでほしくないの…」
「…!」
ギルが、はっ、と小さく息をする音が聞こえた。
と、その時
ぱさり、と優しく外套がめくられる。
霧の作用で、視界がぼやけてよく見えない。
私は、ギルの外套にしがみつくようにしながら続けた。
「お父さんとの約束があるからって、命がけで私の盾になるのはだめ…。
私より、ギル自身を大切にしてほしい…!」