「その、待たせてしまって…」

それだけじゃない。

残業だと勝手に思い込んで、食事に行ってしまった。

誕生日プレゼントで花束をもらってしまった。

――無理して、誕生日を祝わなくてもいいですよ

今朝、張り切っている彼に向ってひどいことを言ってしまった。

いろいろと、朝比奈さんに謝りたい。

「いいよ」

朝比奈さんが言った。

「は、はい?」

今度はあたしが聞き返す番だった。

何が“いいよ”なんだろうか?

「小春ちゃんが帰ってきてくれたから」

朝比奈さんが答えた。

「…だいぶ、遅くに帰ってきましたが」

そう聞き返したら、
「まだ誕生日は終わっていないでしょ」

朝比奈さんが壁にかけてある時計を指差した。
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