1度も足を踏み入れたことがない朝比奈さんの部屋に行くのはハードルが高過ぎる…。

かと言って病人である彼をリビングに出して食事をさせる…と言うのは無理だろう。

「どうすればいいんだろう…」

考えても、せっかく作ったおかゆが冷めてしまうだけだ。

「もう仕方がない!」

我ながら上手にできた――と、思いたい――おかゆが冷めてしまったら元も子もない。

朝比奈さんの部屋のドアの前に立つと、トントンとドアをノックした。

「朝比奈さん、入りますよ」

そう声をかけると、ドアを開けて部屋の中に足を踏み入れた。

初めて足を踏み入れた彼の部屋は、白と緑でコーディネートされた爽やかでスタイリッシュな部屋だった。

白い壁に白い天井、カーテンは緑と白のギンガムチェックだった。

黒に近い緑色のベッドに視線を向けると、朝比奈さんは眠っていた。

その目がうっすらと開いて、視界にあたしを捉えた。
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