「どうぞ」

「ありがとう」

あたしの手から、朝比奈さんが小皿を受け取った。

――何なんだろう、この気持ちは…?

おかゆを咀嚼している彼の横顔を見ながら、あたしはよくわからない気持ちを感じていた。

初めて作ったおかゆを“美味しい”と言ってくれたからホッとしているのだろうか?

でも、何だか違うような気がする…。

温かいような、むずがゆいような、照れくさいような…感じているこの気持ちをどう表現すればいいのか、自分でもよくわからない。

土鍋の中のおかゆは空っぽになっていた。

「美味しかったよ」

そう言って朝比奈さんはあたしに微笑んでくれた。

それに対して、
「はい、ありがとうございます…」

あたしは呟くように、お礼を言うのが精いっぱいだった。
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