そんな朝比奈さんのことをあたしは愛おしく思って…。

「違う、そんなんじゃない」

首を横に振って、自分の気持ちを否定した。

お互いの両親の勧めで半ば強引に結婚した朝比奈さんのことを、あたしは夫だと認めていない。

そもそも、あたしはこの結婚自体に納得をしていない。

彼に愛なんて感じていない。

結婚生活に愛そのものを求めていない。

――グーッ…

「あっ、ご飯食べてないや…」

胸に当てていた手をお腹に変えて、あたしは呟いた。

朝比奈さんのご飯をどうするかと考えていたせいで、自分のご飯を食べるのを忘れていた。

約束の30分まで時間があるし、その間にあたしもご飯を食べよう。

そう思ったあたしは冷蔵庫を開けて、作り置きの中から何を食べようかと選び始めた。
< 118 / 275 >

この作品をシェア

pagetop