お互いのことを何も知らないのに、何で彼はあたしのことを妻だと認めているのだろう?

半ば強引に結婚させられたと言うのに、あたしは妻だと彼に言われている。

どうしてなんだろう?

何でなんだろう?

「――あたしはあなたのことを夫だと思っていません」

あたしがそう言った瞬間、
「――えっ…?」

朝比奈さんの目が驚いたと言うように大きく見開かれた。

「あなたはあたしのことを妻だと思っているんでしょうけれど、あたしはあなたのことを夫だと思ってもいなければ認めていません」

「こ、小春ちゃん…」

うろたえている朝比奈さんとは対照的に、自分でも驚くくらいにあたしは冷静だった。

普段から大きな声を出して怒ると言うことがないからかも知れない。
< 128 / 275 >

この作品をシェア

pagetop