荷物をまとめて自室を出ると、
「――本当に出て行くの…?」

朝比奈さんがこちらを見ながら、呟くように聞いてきた。

「ええ、出て行きますよ」

それに対して、あたしは答えた。

「お互いに距離を置いて、本当にどうするかを決めた方がいいと思いますよ」

あたしは玄関へと足を向かわせると、スニーカーを履いた。

朝比奈さんは呼び止めようとしなかった。

そんな彼に向かって声をかけることなく、あたしは目の前のドアを開けた。

――バタン…

気のせいだろうか、ドアが閉まる音が大きく聞こえた。

「――もう本当に離婚だな…」

あたしは呟くと、歩き出した。

最初から離婚するかも知れないとは思っていたけれど、それが確信へと変わった瞬間に気持ちがフワフワとしていた。
< 130 / 275 >

この作品をシェア

pagetop