第8章*家出
突然実家に帰ってきたにも関わらず、両親はあたしを迎えてくれた。

「欣一くんとケンカでもしたのか?」

そう聞いてきた父親の質問に、あたしは答えることができなかった。

「何があってケンカをしたのかよくわからないけれど、早いところで仲直りをしてくれよ」

答えられなかったあたしに向かって、父親はそう言ったのだった。

2階の1室にある自分の部屋だったところに足を踏み入れると、
「空っぽだ…」

荷物は全て朝比奈さんの家に置いてあるため、部屋の中は何もなかった。

「小春、ふとん持ってきたわよ」

母親の声に視線を向けると、来客用のふとんを部屋に置いている母親の姿があった。

「ありがとう、お母さん」

あたしはお礼を言った。

「欣一さんと何かあったの?」

…やっぱり、そう聞きたくなるのは当然のことだよね。

いきなり荷物を持って家に帰ってきたから、何があったのかって聞きたくなるよね。
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