そんなことを思っていたら、
「田ノ下さん、元気?」

その声に視線を向けると、伊勢谷さんだった。

伊勢谷さんはあじなどのさまざまな種類の干物が入っている発泡スチロールを抱えていた。

本日の広告である干物バイキングの商品で、少ないから出すことにしたのだろう。

「ええ、元気ですよ」

あたしは返事をした。

「元気なのはいいことですよ」

伊勢谷さんは笑うと、あたしの前から立ち去った。

あなたが原因で朝比奈さんと揉めています…なんて、言える訳ないよね。

彼の背中を見ながらフッと笑うと、あたしも切り落としを出すためにその場から立ち去った。

パックしたばかりの切り落としに値段を貼っていたら、
「何なんですか!?」

伊勢谷さんの怒鳴り声が聞こえたので、あたしは驚いて飛びあがりそうになった。
< 137 / 275 >

この作品をシェア

pagetop