「思えば、あの日何があったのかってちゃんと聞けばよかったんだよね。

小春ちゃんが帰ってきてくれたことが嬉しくて…まあ、いいかって思ってちゃんと聞かなかった。

本当にすみませんでした」

「…顔をあげてくれませんか?

謝られることになれていないんです」

あたしがそう言ったら、朝比奈さんは顔をあげてくれた。

「もうこの際だからはっきりと言います」

あたしは彼の顔を見つめると、
「離婚したいです」
と、言った。

「離婚…?」

呟くように、朝比奈さんが聞き返した。

初めてこの言葉を聞いたと言う様子で、あたしを見つめている。

「お互いも知らないのも同然で結婚したのが、そもそも無理だったんです」

あたしは言った。
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