正式な交際がないまま、お互いのことを知らないまま、あたしたちは半ば強引に結婚をさせられた。

お互いの父親が親友だったと言うだけで、あたしたちは結婚をしたのだ。

いわゆる、“愛のない結婚”と言うヤツだ。

朝比奈さんは首を横に振ると、
「それには応えたくないよ」
と、言った。

「父親のことがあるからですか?

うまく行かなかったと言って離婚届を出してしまえばいいだけの問題じゃないですか。

お互いがよく話しあって決めたことだと言えばいいじゃないですか」

そう言い返したあたしに、
「そんな風にうまく行くから気軽に結婚や離婚ができるんだろうね」

朝比奈さんは自嘲気味に呟いた。

「そう思っているんでしたら、すぐに離婚に応じてください」

「小春ちゃんはそれでいいって思ってるの?」

朝比奈さんが聞いてきた。
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