「どうして、あたしにこだわるんですか?」

あたしのような女性とつきあったのは初めてだとかあたしじゃなきゃダメだとか、どうしてこの人はあたしにばかりこだわるのだろう?

疫病神扱いされたくないから?

結婚前みたいに陰口をたたかれたくないから?

「俺、小春ちゃんに出て行かれてからいろいろと考えたんだ。

結婚前につきあっていた彼女たちにどう接していたんだろうって。

君が浮気だと決めつけないで欲しいって意見をぶつけた時、こうしてケンカをした時があったかなって振り返っていたんだ」

朝比奈さんはそこで言葉を区切ると、息を吐いた。

「思えば、俺は彼女たちに何もしてあげられていなかったな。

“女性を大切にしろ”って言う父親の教え通りに彼女たちの身の回りの世話をして、誕生日や記念日にはプレゼントを用意して盛大にお祝いして、迎えとかおこづかいとかそう言うことばかりをやってて…彼女たちの意見には耳を貸さなかったなって思ったんだ。

彼女たちにも言いたいことはあっただろうに」

朝比奈さんは申し訳ないと言う顔をしていた。
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