「よかった」

あたしの返事に満足したのか、朝比奈さんは嬉しそうに笑った。

そんな彼の様子を見ながら、あたしは何とも言えない気持ちに包まれていた。

朝比奈さんとお互いの顔を見て話しあったのは今日が初めてだった。

彼の過去を聞いたのも、本心を聞いたのも今日が初めてだった。

「小春ちゃん」

朝比奈さんがあたしの名前を呼んだ。

「一緒に帰ろうか」

そう言った彼に、
「ええ、わかりました」

あたしは首を縦に振ってうなずいた。

「その前に母にメッセージを送ってもいいですか?

持ってきた荷物も片付けたいので」

「うん、待ってるから」

そう言ったあたしに、朝比奈さんは嬉しそうに首を縦に振ってうなずいた。
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