「小春ちゃんは映画見るの?」

そう聞いてきた朝比奈さんに、今のあたしの気持ちに彼が気づいていなくてよかったと心の底から思った。

「見ますよ。

ただし、邦画の方ですけれども」

その質問に答えると、あたしは紅茶を飲んだ。

「じゃあ、今週は日曜日がお休みでしょう?

一緒に映画に行かない?」

そう言った朝比奈さんに、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

「…はい?」

紅茶を喉に流し込むと、あたしは聞き返した。

「何で急にそんなことを言うんですか?」

あたしが聞くと、
「恋人として仲を深めあう方法と言えば、デートかなって」

朝比奈さんが答えた。

「で、デートですか…」

そう言うことかと思ったのと同時に、心臓がドキドキと早鐘を打っていることに気づいた。
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