恋
その日の夕飯は生姜焼きだった。

生姜の香りがよく効いている柔らかい豚肉が食欲をそそった。

数日ぶりの朝比奈さんが作った料理を口にしたとたん、ホッとしている自分に気づいた。

…こんなにも美味しかったっけか？

「小春ちゃん、どうかした？

美味しくなかった？」

朝比奈さんが首を傾げて聞いてきた。

「いえ、美味しいです」

あたしは返事をすると、キャベツとにんじんのみそ汁をすすった。

「よかった」

朝比奈さんはホッとしたように笑った。

「マズいって言われたらどうしようかと思ってた」

そう言った朝比奈さんに、
「それはないと思います」

あたしは言い返した。

たった数日だけ離れていただけなのに、いつものやりとりができていることにもホッとしている自分がいた。
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