お風呂を済ませると、リビングでテレビを見ている朝比奈さんのところに足を向かわせた。

「朝比奈さん、お風呂が空きましたよ」

あたしが声をかけると、
「うん、わかった」

朝比奈さんは見ていたテレビを消すと、ソファーから腰をあげた。

「それじゃ、お先に休ませて…」

「あっ、待って」

自室へ行こうとしたあたしを朝比奈さんは引き止めてきた。

「何ですか?」

心当たりのあることは特に思い浮かばない。

何があってあたしを引き止めたのだろう?

そう思っていたら、
「ハグさせてくれないかな?」

朝比奈さんが言った。

「…はい?」

突然そんなことを言ってきた彼に、あたしは訳がわからなかった。
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