これで3分とか1分とかにしてくれと言われてしまったら、間違いなくあたしは彼に蹴りを入れていたことだろう。

呆れているあたしに気づいてないのか、
「じゃあ、行くよ」

朝比奈さんは両手を広げて、抱きしめる準備をしていた。

わーっ、本当にやるんですね…。

10秒の辛抱だ。

10秒なんてあっと言う間だ。

心の中で自分に言い聞かせていたら、朝比奈さんの両手があたしの躰を包み込んできた。

その瞬間、フワリと彼の香りが鼻をくすぐった。

…香水、ではないよね。

そう思ったのも束の間、朝比奈さんはあたしを抱きしめた。

あっと言う間に、あたしの躰は朝比奈さんの腕の中にすっぽりと入ってしまった。

体型的には華奢そうに見えるけれど、意外にも大きいんだなと思った。
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