第11章*映画
寝る前の1日1回のハグは最初こそは戸惑ったものの、日が経つにつれて何ともないと思えるようになった。

つまり、“なれてしまった”と言うことである。

「――もう10秒が経ちましたよ」

抱きしめているあたしを離すようにと、朝比奈さんに声をかけた。

「後5秒だけさせて」

朝比奈さんはあたしから離れようとしなかった。

「延長は2回までのはずでしたよね?」

あたしがなれてしまったことに気づいた朝比奈さんは、数日前からハグの延長を希望するようになった。

もちろん、断固としてあたしは延長を断ったのだが、いつもの通り彼は引き下がってくれなかった。

その結果、2回までの条件として延長を許可することになってしまった。

…何だか都合のいいようにされている気がする。
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