「大人しい性格かと思ったら、意外と自分の意見ははっきりと言う。

夫である俺に対しても容赦ないその性格も、小春ちゃんの個性だと俺は思ってるよ。

だから、小春ちゃんは小春ちゃんのままでいて欲しいって思ってる」

ギュッ…と、繋いでいるその手が強くなった。

朝比奈さんがあたしを見つめてきた。

「俺はそんな小春ちゃんが好きだよ」

あたしを見つめてくるその瞳には、一切の濁りはない。

うっかりしたら飲み込まれてしまいそうだ。

「誰のところにも行って欲しくないから、早く仕事を辞めて家庭に入って欲しいって思ってる」

そう言っている彼の瞳をそらしたいのにそらすことができない自分がいた。

繋いでいるこの手を今すぐにでも離したいのに離すことができない。
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