その日の夜。

「朝比奈さん、お話ししたいことがあるんですけどいいですか?」

キッチンで夕飯を作っている朝比奈さんに、あたしは声をかけた。

時間は8時を過ぎているけれど、彼は自分も仕事で疲れているにも関わらず料理を作ってくれていた。

本当だったらパートで、しかも彼よりも帰りが早いあたしが料理をするはずなんだけど…料理の知識はお菓子作りだけと言うあたしに、隣の晩ご飯みたいな料理を作れと言うのはハードルが高過ぎる。

「どうかしたの?」

朝比奈さんは手なれたようにフライパンを動かしながら答えた。

料理をしながら会話にも対応するって、本当になれているんだな…。

今の今まで、何で良縁に恵まれなかったのかしら?

そう思いたいのは今は後にすることにして、
「来週なんですけどね…」

あたしは来週に控えている『ベイビー・スターダスト』のライブのことを話した。
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