「まあ、頑張ってください」

「小春ちゃん、冷たい…」

「冷たくした覚えもなければ温かくした覚えもないんですけど。

じゃ、行ってきます」

ガチャッとドアを開けると、家を出た。

飲み会の会場は駅前にある大手居酒屋チェーン店である。

空を見あげると、銀色の月が出ていた。

その月を見ながら息を吐いたら、その息は真っ白だった。

この間の映画デートで自分の気持ちに気づいて以来、あたしは朝比奈さんにこの気持ちがバレないようにいつも通りに接していた。

幸いにも朝比奈さんはあたしの気持ちに気づいていないみたいでホッとしている…けど、油断していたらいつかどこかでバレてしまう。

この気持ちを言ってしまったら楽かも知れないけれど、それを伝える勇気はあたしの中にはない。
< 211 / 275 >

この作品をシェア

pagetop