「まあ、いいんじゃないかしらね。

最近は共働きの家庭の方が多いそうだからねえ」

「旦那さんも心が広いわねえ」

「出版社って結構稼ぎがいいのね」

ものすごくと言っていいほど、稼ぎがいいですよ。

あの天下の『葉月出版社』に勤めているんですから、本当にすごいですよ。

出張先のホテルは高級旅館だったんですから。

あたしは心の中で呟きながら、皿のうえの鶏の唐揚げを箸でつまんだ。

うん、美味しい…でも、朝比奈さんが作ってくれる唐揚げの方がもっと美味しい。

彼が作ってくれる唐揚げはニンニクと生姜がよく効いていて、とても美味しいのだ。

そんなことを思いながら唐揚げを食べていたら、
「田ノ下さん、隣いいですか?」

視線を向けると、伊勢谷さんだった。

「いいですよ」

あたしが返事をすると、
「じゃ、お邪魔します」

伊勢谷さんがあたしの隣に腰を下ろした。
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