恋
入社した当時、不慣れなことばかりで戸惑うあたしを常にフォローしてくれていたのは伊勢谷さんだった。
明るくてお調子者の彼は人見知りのあたしにも分け隔てなく優しく接してくれた。
契約が切れたらあたしも辞めて、伊勢谷さんも違う支店に異動になる。
会えないのはもちろんのことだけど、繋がりもなくなってしまう。
「――頑張ってください…」
そう思ったら寂しさと同時に悲しさも出てきて、呟くように声をかけることしかできなかった。
「ありがとうございます、田ノ下さん。
たった1度だけでしたけど、田ノ下さんと食事に行ったことを忘れませんから」
呟くように声をかけたあたしに、伊勢谷さんは笑顔で返事をしてくれた。
「それから、伊勢谷さんも幸せになってください」
続けてそう言ったあたしに、
「ありがとうございます」
伊勢谷さんはお礼を言うと、アスパラのベーコン巻きを口に入れた。
あたしも悲しさと寂しさで包まれているこの気持ちを振り払うように、グラスに手を伸ばした。
「田ノ下さん、それテキーラ!」
グラスに口をつけた瞬間、伊勢谷さんの驚いた声が聞こえた。
明るくてお調子者の彼は人見知りのあたしにも分け隔てなく優しく接してくれた。
契約が切れたらあたしも辞めて、伊勢谷さんも違う支店に異動になる。
会えないのはもちろんのことだけど、繋がりもなくなってしまう。
「――頑張ってください…」
そう思ったら寂しさと同時に悲しさも出てきて、呟くように声をかけることしかできなかった。
「ありがとうございます、田ノ下さん。
たった1度だけでしたけど、田ノ下さんと食事に行ったことを忘れませんから」
呟くように声をかけたあたしに、伊勢谷さんは笑顔で返事をしてくれた。
「それから、伊勢谷さんも幸せになってください」
続けてそう言ったあたしに、
「ありがとうございます」
伊勢谷さんはお礼を言うと、アスパラのベーコン巻きを口に入れた。
あたしも悲しさと寂しさで包まれているこの気持ちを振り払うように、グラスに手を伸ばした。
「田ノ下さん、それテキーラ!」
グラスに口をつけた瞬間、伊勢谷さんの驚いた声が聞こえた。