恋
こんな朝早い時間に起きているのはあたしたちかと思ったけれど、そうでもなかった。

ランニングをしている人や新聞配達のお兄さんと、意外にも起きている人がいた。

朝比奈さんもそうだけど、早起きなんだな。

「いつもこの公園を通るんだ」

公園の中に入ると、当たり前だけど遊んでいる子供はいなかった。

誰も遊んでいないせいなのか、置かれている遊具はどこか寂しそうに見えた。

「たまにだけど、ボランティアでゴミ拾いをしている町内会の人とか太極拳をしているおじいさんやおばあさんを見ることがあるんだ」

朝比奈さんが言った。

「へえ、そうなんです…」

返事をしかけたあたしの耳に入ってきたのは、猫の鳴き声だった。

「どうしたの？」

あたしの様子を不思議に思ったのか、朝比奈さんが声をかけてきた。

「猫の鳴き声がするんですけど、あたしの気のせいですかね？」

あたしがそう言ったら、
「ホントだ、こっちの方から聞こえる」

朝比奈さんがそう言って歩き出したので、あたしは彼の後を追った。
< 236 / 275 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop